東大入っても品性は養われなかったイキリオタクの懺悔

捉えどころのない生の苦しみの中を、ユーモアと哲学で颯爽と駆け抜けていきたい。一介の冴えない大学生。

嘔吐

 

昨日の夕方、大学で嘔吐した。

 

 

4限に出席し、食堂でつけ麺大盛りを食べ、書籍部で新書を漁っていた。

 

つけ麺はスパイシーフェアの限定商品で、つけ汁が辛口だった。同じくフェア商品のキーマカレーは私の舌を唸らせたのだが、こいつはダメだった。良いところがなかった。目指すところがわからなかった。

基本的に貧乏舌の私は、大半の人間が文句を言うような料理であっても、食材や味付けそのものが苦手という場合を除けば美味しくいただけるのだが、それをもってしても厳しい評価を下さざるを得なかった。もう二度と注文しないであろう。

 

チープな食レポもとい憤懣本舗はさておき、昨日あの時点で口にしていた物はこのつけ麺だけだった。

 

 

食事を済ませてバイトへ向かう途中、書籍部へ寄った。バイト先へは根津駅から電車に乗る。書籍部の方面と重なるため、都合がよいのだ。

一度も出席していない、試験一発勝負がゆえ履修しただけの授業の教科書を見ようと思っていた。

 

実は、本屋にはあまり行きたくない。

本を読むこと自体よりも、本屋という空間が好きだ。新刊や当店のベストセラーといったコーナーは、新しいや売れているというだけで気になってしまうし、平積みされた本たちはそれぞれに魅力を放っている。その時点で何冊かを手に取ってしまい、飽き足らず背表紙のタイトルを追っていくと、また数冊が自分のアンテナに引っかかる。

際限なく消費意欲をそそられてしまうから、本屋に行くときは気を張らなければならない。本屋に行きたくないとは、そういう意味だ。

 

なのでブックオフを除けば(ブックオフは中古で安いので気軽に入れる)、本屋を訪れるのは久方ぶりだった。

入ると大学生協ならではのコーナーがあり、早速夢中になっていった。ハードカバーは買わないが、文庫・新書3冊以上で15%オフというフェアをやっていたのもあり、気になる新書を片っ端から右手に携えていく。

 

昨日amazonの「欲しいものリスト」に追加したばかりの本がないかと探しているとき、異変が起きた。

頭がふらついたのである。突如として、目の前の光景が急速回転を始めた。気分が悪かった。天動説も地動説もなく、世界は自分中心で回っているのだと陳腐なことを思った。

抱えた本を平積みの隅に置いてトイレへ向かおうと思ったが、棚に戻されると面倒なのでサービスカウンターに預けた。こんな時でも些末なことに脳ははたらく。

 

多少の吐き気はあったが、今にも嘔吐しそうというより、とにかく横になって頭を休めたかった。しかし都合の良いベンチなどが見当たらず、仕方なくトイレに入ると更に気持ち悪くなった。

個室が二つとも埋まっていた。

さほどのサイズもないゴミ箱の上に顔を持っていき、全て吐き出せば溢れ出してしまうであろう麺が飛び出てくるのを今か今かと待った。

すると、オエーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッというえずき声だけが響き渡り、出てきたのはベビースターラーメンの小さいパックぐらいの量だった。

 

吐き出せなかった。

まるで普段の私じゃないか。言いたいことを何も言えない。溜め込んだ毒や闇は割れ物のように空虚な言葉で包んで包んで、最終的にも空虚だ。

 

正直に言おう。

この時、私は期待した。誰か構ってくれないかと。

本当はいつも、誰かが自分を救ってくれないかと期待している。だから広大なインターネットへ航海に出る。そして毎度後悔する。

 

結局、誰も助けてくれるはずがない。私を救済できるのは尊師か私ぐらいのもので、尊師亡き今、私ただ一人だ。

個室から出てきた若者は私に一瞥くれただけだった。

 

 

それからしばらく、個室で気を失っていたのかもしれない。

というのも、先ほどのベビースターラーメン以上のものを吐き出してようやく少し回復し、外へ出ると、もう薄暗くなっていた。時刻を確認すると午後7時20分。バイトには間に合わない時間だった。

記憶が正しければ、トイレへ入ってから一時間以上経過していた。けれど、あの密室でそんなに過ごした感覚はなかった。だからさっき言った判断を下したわけだ。

 

アクエリアスは美味しかった。

学内のローソンで買って一気に飲んだ。気分が悪い時はポカリスエット、というマイルールがあって、昨日もポカリスエットを買おうとしたが、隣のアクエリアスが割引されていたのでそっちを選んだ。なんて金の亡者なのだろう。否、生活がかかっている。

 

安田講堂前のベンチに座った。左隣の外国人カップルの会話が煩わしく(大体私は外国語が聞こえると無性にムシャクシャする)、右隣ではオンラインで会話する東大生の口調がこの世の終わりで、おとなしく帰ることにした。

 

 

丸の内線に乗りながら、なぜ嘔吐したのかを考えた。

やはりつけ麺が粗悪品だったのだろうか。でも、さすがに大学生協がそんなものを提供するとは思いづらい。

そういえば4限の途中、友達が手で口を押えて出ていくのを見た。何らかの病気が流行っているのかもしれない。

 

正しい理由などどうでもよかった。私は「情報」に酔ったのだと思うことにした。

 

膨大な本が並ぶ本棚が直接の原因ではない。

インターネットの海を毎日航海していれば、いつかは船酔いする。私の精神は繊細で、ちょっとした波にもやられてしまう。

砂漠と海を往ったり来たりで混乱するが、頭の中を高橋優の『駱駝』という曲が流れた。

 

「砂漠の中を行く 駱駝にまたがれず

靴の中を汚す 情報(インフォメーション)の砂 重たいな」

 

全てに嫌気がさしていた。あらゆる情報に、事物に、存在に。

しばらく海に出るのは控えようと思った。

 

 

 

家に着いてまだしんどさが残っていたので、すぐに寝た。寝たら快復するだろと楽観的だった。

3時間ほどで目が覚め、まだ頭が痛かった。

スマホもいじれない(いじらないと決めた)ので久々にテレビを見た。ワールドスポーツMLBアメトーーク、その後のよくわからん番組。

 

面白い情報を得た。メモしようと、結局iPhoneの電源を入れてしまった。evernoteだけでなく、twitterを開いた。三日坊主も驚く早さ。

 

 

 

再び吐き気を催した。

今度は自分の存在に、である。