ポエジーたちのいるところ

昨日、大学院の修了式があった。はじめて安田講堂に入ったのだが、朝早くから駆り出されたことでの寝不足、雨天、ひとごみのスリーコンボで著しくテンションが低かった。 全体での修了式が終わった後、自分の所属する研究科、コースごとでの催しがあった。先…

不穏の書、談笑

深夜にコンビニに出かける一連の流れを久しぶりにこなして、なんだか懐かしさを感じた。今の家はれっきとした住宅街といった風情で、精米店や町内会の会館がすぐのところに立ち並んでいる。上京して以来、六年間住んでいた部屋を退去してこの街に移り住んで…

散歩の注釈

本を読むことは街を歩くようなものだと、誰かがそのエッセーで書いていて、先日街を歩きながら思い出した。つまり、街を歩くというのは本を読むようなものでもある。 久我山から神田川沿いに三鷹台の方へ、先週の土曜日のことだった。なんら大したことはない…

昨日・今日・明日

半月前くらいから途端に秋めいてきて、秋の匂いをかいでいると、寂しくてどうしようもなかった時期を思い出して、心地よい寂しさに包まれる。季節が生き続ける限り、僕の記憶も生き続ける。季節はいつまでも生き続けてほしいと思う。COP26の報道を見ていると…

生活の制作

……こんなタイトルで始めてしまったら、朝早く起きる健康的な生活を確立したのだと勘違いしたくもなるが、そんなわけはない。これを書いているのは深夜から明け方への端境期。日が短くなっていくので朝も多少遅い。寝落ちしたのは久しぶりだった。僕がこの媒…

生成したか せいせいしたか

長らく文章を書いていないと、文章を書くことへのハードルが、書く文章へのハードルが上がってしまって、なおさら書けなくなる。なかなか返せずにいたラインは底のほうにたまっていて、定期的に(といっても一定の間隔で、ではもちろんない)、返さなきゃい…

右手の優越

2月25日・26日は、東大生にとって忘れたくても忘れられない、否、忘れようとも思わない日付だ。あらゆる国立大学と同じく、前期二次試験が実施される日である。 僕が東大を受験したのは五年前になる。25日から26日へと、夜中から朝方へと向かうこの時間帯は…

〈margin〉

白紙を前にして、人はたじろぐ。 僕がはじめて手にしたノートには、几帳面にいくつもの枠や欄が配置され、機械的な文字が死んだように躍っていた。ゴルフのスコアブック。到底、想像力を掻き立てられるような代物ではない。運動神経の弱い父親が会社の在庫を…

ゲーム

小学生から中学生にかけて、「パワプロクンポケット」というゲームが好きで、よく遊んでいた。「パワプロ」といえば野球のゲームであることは、やったことがない人でもなんとなく知っていると思う。ただ「パワポケ(パワプロクンポケット)」シリーズのメイ…

感情の剥落

たった今まで、僕はある一つの気分に憑りつかれていた──「憑りつかれていた」と言えば、それがさも悪いものであったかのように思えてしまうが、そうではない。ならば、一つの気分があった、というに留めておく方がよいだろう。ある一つの気分があった。 その…

舞い踊る

左、右にすれ違う人間をかわし、レゴブロックがそのまま巨大化したようなアパホテルを小馬鹿にしていると、橋、あるいは橋の上に着く。花が置かれ、供物のペットボトルがまた新しいものになっている。どこかしらの飲み屋から退出してきた男女五人組のうち、…

語りえないもの、語りえるもの(彩冷える)

出がけに開けっ放しにしていたカーテンを閉めて、ほんの少し落ち着きを取り戻した。やっぱり夜はカーテンを閉めていないとそわそわする。いけないことをしている、という感じがする。でも、昼はカーテンを閉めていたって多少の光は入ってくるのであって、夜…

世界××前仮説

拝啓 このブログ読んでいるあなた は どこで なにをして いるのでしょう? 世界射精前仮説/後藤輝樹 自意識、はございません 性欲、はありません 固有名には自信があります 千本ノックが終わる 夏のナスカの地上絵で ふりさけみれば 春日なる 八宝菜を聖別…

結婚しました

柴田聡子の曲を聴いていて(小学生の頃は「聡」と「聴」という字の見分けがつかず、聴くだなんて人の名前に似つかわしくないなと思っていた)、いつもは見ない歌詞の画面を見ていたら、やっぱりこの人は詩人だ! と雷に打たれたような気がして、落ち着くため…

My favorite 100 songs

井上陽水/夢の中へ 嘘とカメレオン/されど奇術師は賽を振る 大原櫻子(カバー)/おどるポンポコリン 大瀧詠一/Happy End で始めよう 天野月子/骨 後ろから這いより隊G/恋は渾沌の隷也 i☆Ris(カバー)/おジャ魔女カーニバル!! 荒井由実/やさしさに包…

たくわえる、かさねていく

圭織という名前の女の子がいた。 わざわざ「という名前」なんてつけなくとも、べつによくある名前だと、思っただろう。強いていえば、香織や佳織の方がよく見かけるくらいか。 圭織は築何十年か見当つかないような、狭い坂道の脇にある屋敷みたいな家に住ん…

きっかけは、コロナ襲来。

以下の文章は2020年3月27日に書かれたものです "コロナウイルスの拡大を受けて、ツイッターのタイムラインがいつもにも増して騒がしくなっている。そこでは政治、経済、科学、医療、陰謀論などのトピックがかまびすしく叫ばれ、いったん落ち着いてくれ、とス…

エピゴーネン

勉強が嫌になって外へ飛び出して、することもないのでとりあえずただ歩いて、行くところもないのでただまっすぐ歩いて歩いて、いくつか公園や商店街や銀座通りなるものを抜けて、東武東上線沿いを歩いていて、板橋区に入って、やけに長いアーケードを歩いて…

エピソード3

今日は昼過ぎに起きて、家にいっさいの食材はないため空腹に耐えながら本を読んでいた。東京からパリ、パリからロサンゼルス、ロサンゼルスからウラジオストクといった具合に、あちこち経線を飛び移るような生活リズム。リズムっていうとなんか可愛い。風呂…

エピソード2

今日も目が覚めると、ちょうど日付が変わった頃だった。予定が皆無の生活においては、日と日の境界はまったく曖昧になる。ずっと滑らかに時が進んでいく感覚。寝て起きても、日が変わったという気はしない。もはや日という概念はなくて、昨日とか今日とか明…

エピソード1

部屋の窓から正面に見えるホテルの看板が、煌々と光っている。部屋の中では最近買ったワイヤレススピーカーからハロプロの楽曲メドレーが流れている。YouTubeにあがっているやつで、再生時間は2時間ジャストだ。 始まる前にはとうてい予期しない形で春休み…

憂鬱の散髪 Part2

自分が眠っているのか起きているのかわからない微 睡み状態のなか、時折きつくしまった宝箱をこじ開 けるようにはっと瞼を開いては枕元のスマホで時刻 を確認し、瞬時に到着までの時間を計算することを 繰り返し、少しでも多く眠ろうともがいていた。こ のま…

てーほへてほへ

旅の狂騒から一夜明け、昼過ぎに目覚め本屋に寄ってマックで食事し、塾でのバイトを終えてニュースウォッチ9を観ながら晩飯を食べるという、旅以前と同じ生活をこなし、ベッドに寝転がってスマホと本を行ったり来たりしながら心置きなく音楽を聴く。 望んで…

やしん

深夜になんとなくフェイスブックを見ていたら、友人の何気ない投稿がわりと衝撃的な内容のことを言っていた。 「明日レディクレ出ます」 邦ロック好き、特に関西の人間にならその衝撃がよく伝わると思うけど、『RADIO CRAZY』という年末のロックフェス。寒い…

虫ケ・セラ・セラ

自分は虫けらのように死んでいくしかないのか、と思うことがある。大抵それは夜更かしをしている時だ。この観念にとりつかれて夜を更かすのか、夜を更かすからこそ悲観が襲うのか、まるでわからない。せめて煙草でも吹かしてみた方が、人生経験としては有意…

語りすぎてはいけない

千葉雅也という若手の哲学者への異様な関心が、日々強まっている。最近は会話の先々で「千葉雅也という哲学者がいてさ、」という話を、自己愛を交えて展開してしまっている。まるで恋人であるかのような口ぶりで。その際、彼のセクシュアリティについて言及…

(Blank)

なんもかわらんと思う。毎日大衆寝静まり、固定客だけ漂うTLになったころ、何の脈絡も面白みも技巧もないツイートを数回、まるで毎日同じシーンを再生しているような錯覚に陥る。何の演技力もいらず、ただ布団に寝転がってスマホ見ていさえすればよく。今日…

実篤と光太郎の相克

かっこいいかダサいかで行動基準を決める人間はダサくてキモくてしかたない*1、と思ったりするがこれ自体もう思想の面からDASAに染め上げられていてどうしようもない*2季節だが、ブログを書かない理由は山ほどあるが書く理由は一つもない、けど理由がないか…

ガチ恋侍、振られて候

1 陰鬱で膨れ上がった僕の脳のように通知が溜まったLINEを開くと、無視しようともできない大事な返信が来ていた。そうだ、最近の過眠の原因は大学だけじゃない。自分が送ったメッセージがあった。自分の行為のキモさがあった。 「やっぱり」「付き合う」「…

投げやりでなく

投げやりでなく 佐藤渚 散らばったギンナンを踏みつけないよう、うつむきながら慎重に歩く。前方から歩く男女の声が、顔が見えない分、余計に耳に障る。何がそんなに面白いんだろう。あほらし。 入学して一年半、ずっとつまんない。それまでの十八年間もつま…